「知ってたんですか？」

「たぶんそうだろうな、と思ってた」

「そうなんですか……」


さすがと言うか何というか、やっぱり新藤さんって頭いいなあ。


「ほら、君も食べなくちゃ。時間がなくなるぞ？」

「あ、はい……」

「昨夜、美沙さんはしきりに君達の事を話してたよ。彼の名前も知っていたしね。またよりを戻すらしいとも」

「そ、そんなの嘘です！ 私は……」


“新藤さん一筋です”と言いたかったけど、さすがにそれを面と向かって言うのは照れ臭かった。


「分かってる。彼女の話を鵜呑みにするほど、僕は愚かじゃないよ」

「よかった……。でも、どうして美沙さんは知ってたんでしょうか？」

「興信所を使って君を調べたそうだ」

「興信所、ですか？ 探偵ではなく？」

「そう。ま、やってる事は探偵と大差ないけどね」

「そうなんですか……」


なんだ。あまり心配する必要はなかったのね。

と安心したものの……


「チラッと見ただけだが、なかなか良さそうな男じゃないか？」

「え？ それって、誰の事を……」

「決まってるじゃないか。昨夜の彼、いや、いわゆる“元彼”かな」

「そ、そんな事は……」


と言い掛けたものの、“そんな事ないです”とは続けられなかった。それを言ったら、竹宮さんをけなす事になりそうで。