ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~

「君の知り合い?」


竹宮さんの声で私は我に返った。


「はい……」

「そうか。家族でディナーというところだね?」

「違います!」


私はつい、強く否定してしまい、竹宮さんはキョトンとした顔をした。だって、あの三人は実際に家族じゃないし、そう見える事がとても嫌だったから……


「と言うと……?」

「男性は私の上司で、小さいお子さんは上司の娘さんですけど、女性は奥さんではありません」

「ああ、そういう事? では、あの女性は上司さんとはどんなご関係なのかな?」

「亡くなった奥様の妹さんです」

「なるほど。しかしああして食事をするという事は、単なる義理の仲ではないような……」

「違います! そんな事はありません」


私はまたしても強く否定してしまった。しかも大きめな声で。新藤さんに聞こえたらかっこ悪いなと思ったけど、それはないみたい。こっちを振り向く気配もないから。もっとも、美沙さんはさっきからチラチラとこっちを見ている。顔に薄笑いを浮かべながら……


「ごめん。余計な事を言ったみたいだね?」

「い、いいえ。私こそ、すみません」

「そうか……。うーん、なんか、分かった気がする」

「はい?」


竹宮さんは気になる事を呟き、私はすぐさま聞き返したのだけど、彼はそれに答える代わりにクルッと上体を捻り、美沙さんの方を向いた。