ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~

私は俯きながら、新藤さんの返事を待った。私の心臓は、あり得ないほどバクバク言っていた。


ところが、いくら待っても新藤さんの返事はなかった。とうとう痺れを切らし、ゆっくりと顔を上げて新藤さんを見ると……彼は眠っていた。

新藤さんは俯いて、口を半開きにしてスヤスヤとお休み中だった。そう言えば、今朝はまみちゃんが早く起きたと言ってたっけ。という事は、新藤さんも早くから起きてたのよね。だから眠くなっちゃったんだわ。


なんだあ。せっかく勇気を振り絞って告白したのになあ。


がっかりして、でも反面ホッとしながら、私は新藤さんの寝顔に見入った。起きてる時の新藤さんは、一言で言えば凛々しいという印象だけど、寝顔は少年のようにあどけなく、可愛いって感じがする。


私は無性にキスがしたくなり、静かに新藤さんの顔に自分の顔を近付けて行った。そして、彼の唇に私のそれをそっと触れさせた。


柔らかくて、温かいわ……


何年ぶりかもわからないほど、久し振りのキス。最初は触れるだけのつもりだったけど、それでは満足できなくなり、私は強く唇を押し当てると、そっと舌を差し込んでいった。


新藤さんの舌に舌を絡めると、クチュクチュといやらしい音がして、それを聞いてますます私は興奮していった。

こんな事をしていたら、きっと新藤さんは目を覚ましてしまう。でも、それで構わないと思った。もし彼に拒まれたら、とてもショックだけれども。


「ん……」


と新藤さんが声を漏らすのと、それは同時だった。

薄く目を開いた私の視界にまみちゃんが映り、目と目が合ってしまった。