「あのっ」
不意に話しかけられ、息を切らしながら頭をあげる。
百瀬がベンチから立ち上がって俺を見ていた。
「ちょっといいですか?
えっと、その……男の子、見ませんでした?」
「え?」
「私と同い年くらいの、そのぉ…」
かあ、と顔を赤らめた。
それって俺…だよな。
やばい、可愛い
え?どうしよ、可愛いすぎるだろこの子。
息なんか、疲労なんかすっかり忘れて、顔が赤くなった彼女に更に赤面する変な俺。
「すみません…見てないならその、いーんです」
おずおずとベンチに戻ろうとする百瀬。
これじゃあいけない、とつい口から出任せが自己主張。
「俺っ…柚邑、くんの、い…妹です!
その、百瀬さんですか?」
「え…?」
ベンチに腰を掛けようとした百瀬の顔が上がる。
出任せだったため、若干流れは遅いものの、それでもきちんと嘘が流れた。
自分の名前を柚邑くん、なんて恥ずかしい。
けど、百瀬は待ってくれてるんだから。
なんとか気持ちに応えたかったんだ。


