【わっかた!りょう会議室!】
ニョタ化した時にはなかった、魂が抜ける感触を感じた。
ふらふらと足の力を無くし、ふわりとスカートを靡かせ崩れ落ちる。
体の全神経が重く感じた。
「…な、なにがあったんだ俺……」
【わっかた】はある間違いかもしれないが、なんで【了解】が【りょう会議室】になるんだ。
しかも百瀬に当てたメールで誤字なんて。
消えたくなるほどの喪失感。
……ここで約束をすっぽかしたら、今度こそ俺の片想いは消えてなくなる。
所詮本の貸し借りだが、俺にとっては一斉一代の大イベント。
約束を取り付けた時は眠れなかったものさ。
キリッと足に力を入れ、立ち上がる。
行かねば。
行って本を受け取らねば。
バンッとドアを開け、廊下に踏み出す。
と。
「ゆーちゃん……?」
蜜柑があんぐりと俺を見ていた。
待ち伏せとかじゃなく、たまたまといった感じ。
「どこいったかと思ったら……なんで兄さんの部屋に?」
行かねばっと先走るあまり、言い訳ができない。
酸素を失った鯉のようにパクパクと口を開け、言い訳の糸口を探す。
なにか、なにかないか……


