“似合う!似合うぞゆーちゃん!”
アカネまでもが反応してくる。
何かを失った気がした。
「……はあ」
きゃあきゃあ騒ぐ変態二人を見ていたくなくて、ふと部屋の時計に目を会わす。
時刻は7時40分。
「……あれ」
何かが引っ掛かった。
大事な大事な何かを、ポツンと忘れてしまったような、そんな――
ガクガクと意識が震える最中、携帯がなり…
そしてそのディスプレイに表示された文字が、えっと、確か……
「あぁああああ!」
百瀬。
俺の絶賛片想い中の彼女だ。
「わす…忘れてた!」
俺としたことが。
今日は濃すぎて、非現実的すぎて。
すっかり脳から溢れてしまっていたのだ。ごめんね百瀬。
「ゆーちゃんどうしたの?」
蜜柑が不思議そうに聞いてくるが、そんなことに意識を向けてる場合じゃない。
急いで隣の俺の部屋へ向かい、携帯のメールを確認する。
【約束の本、さっき読み終わったのm(__)m
だから、今日の夜待ち合わせして渡していいかな?
8時にミズクメ神社の前で。待ってるね!】
そのメールに、俺はなんて返したっけ。
光の速度で画面をスクロールし、送信フォルダを開く。
ちなみに百瀬はどこか古風な子で、SNSなどを一切使わない。
だからメールなのだ。
「あった…」
見つけたメールを恐る恐る開く。


