九尾がいるという祠に入って、愕然とした。
床にまで飛び散った大量の血に、慣れ親しんだ愛しい母親の香り。
指一本余すことなく、母親の体は九尾に食われていた。
「か、…あさ…ま……」
膝をついたとき、着物に血が染み込んだ。
彼女にとって、母親は全てだった。
甘やかしすぎなくらいに愛されて育ってきた。
自分のために身を粉にして働いてくれたのも知ってる。
倒れた時に大慌てして、治ったら泣いてくれたのも知ってる。
そんな母親は、もういないのだ。
「なんだ子供。この九尾の狐に何の用だ。
…見慣れぬ顔だな。しかし、器量がいい。
将来我の贄になる可能性も…」
奥の九尾はしゃがれた声で手を伸ばしてくる。
大好きな母親を食べたその手で。
怒りが膨らみ、宝を支配した。
初めてだった。何かを殺そうと思ったのは。
「一一かあさまを、かえせ」
宝の中で、破壊神が解放された。


