妄想世界に屁理屈を。



◇◇◇


目を開けると、淡い光がポツポツと俺らを照らしていた。
気持ちが悪くなるような香の匂い。

「…いっ…」

頭痛がした。

頰が濡れていて、川の水か流血なのかわからない。


確認しようとして、手首が紐で縛られてることに気がついた。
ついでに足も。


「……ま、まじかよ…」

ものっそいきつい。
指が寒く感じるんだけど、これ血止まってるよね。

目でスズを探す。
と。


「おはよー、おねーさん」
「目覚めの悪い光景じゃな」

いつも通りの軽い声と、皮肉たっぷりの女性の声。

目を凝らすと、松明の明かりでかすかに照らされた鸞さんと苑雛くんがいた。
俺と同じく、手首が芋虫になってる。


「…え?これ、ちょ、どゆことですか?」

意味がわからない。

さっきまで彼女らとは別行動だった。
なのになぜ、同じ部屋で縛られてるのか。


「なんでって顔してるのぉ」

「なんで鸞さんたちが……あ、」

そこで、洞窟の壁際にも芋虫を見つけた。

俺なんかよりも縛りが頑丈。足の先まで手厚く芋虫にされた、黒髪。


「なるほど、犯人は黒庵さんを縛って我が物にするのが目当てと」


「そーそー。モテる男は違うよねぇ」


そう判断した。
苑雛くんまで頷いてきたから、たぶんそうなんだr

「んでそうなんだよ!意味わかんねぇ!」

…怒られた。

ガウガウと噛みつくように怒ってくるけど、なんか芋虫の今ならなにを言ってもこわくないな。

「いやだってほら、俺らよりもずっと丁寧に芋虫されてるじゃないですか」

「どう考えても俺が暴れねぇようにだろうが…」

そうだ、縛られて血が止められてるから感覚が麻痺してた。

「てか、黒庵さんほどのバカ力が黙って抑えられるなんて…」

「う、うっせぇ!この縄があの札の強化版じゃなけりゃあ俺だって引きちぎれるし!!」


そうか、この縄はあのスズを捉えてた縄の強化版なのか。

なにかしら霊的な守護でもあるに違いない。

そりゃあ、力任せにやっても無理だろう。