「僕たちは三人で一緒のところに落ちたんだけど、なにぶんお父さんがずっとあの調子で…」
長老の家で休んでいるため不在の驪さん。
なにがあったのだろうか。
「どうやらこの村は水を…正確には水神を恐れているらしいのじゃ。
八岐大蛇(ヤマタノオロチ)は水の神と言われてるから…」
驪さんはただの引きこもりではない。
それはもう高位の神様で、水を司る黒龍だ。
「…とおまきでも、自分を恐れてるところにいるのは気分が良くないらしい。
だから体調が万全じゃないんだよね」
「…可哀想に…それも赤龍の策略なんでしょうか?」
「だと思うよ。
しかもあの姿にさせたのは赤龍みたいなんだよ。
それもなにかの策略があるんじゃないかな」
そういえばお見苦しい姿をって言ってたな。
あんなに綺麗なのに。
「じゃ、離れたほうがいいんじゃねぇの?そんなやつらにもし黒龍だってばれてみ、殺されんぞ」
黒庵さんがそう言うと、ギロリと睨んだのは苑雛くんだった。
「あのねぇ、なんのために赤龍がこんな七面倒なことをしたと思う?
退治させるためでしょ、どう考えても」
まあ普通に考えたらそうだよなぁ。
「言うなればここはスサノヲのいないバーチャル八岐大蛇なの!
その英雄は誰がなるの?ぼくたちしかいないじゃん!
そしてそれを果たしたもののみ、得られるものがある一一と、考えてる」
「そしてそれが娘一一もとい、アカネの体の元となる竹の実なのだと思う」
なるほど。
勝利の代償が俺たちが今必要なものってことか。
「自分が今乗っ取ってるココをやたらめったら荒らされたくないのと、黒龍に取られたくないんじゃろうな。
だからわかりやすい苦難を与えてさっさと帰ってもらいたいのじゃろ」
その苦難の舞台として八岐大蛇伝説を使用した。
驪さんが嫌いだから龍退治伝説にさせたのかも。
うわ、みみっちい嫌がらせ。
“なら竹の実だけ渡してくれりゃあいいのに”
本当だ。
わかりやすい苦難といえど、面倒なのに変わりはない。
さっさと渡してくれれば帰れるのに。
「わかんないよ」
“え?”
「赤龍なりに、この苦難には意図があるのかも。
ただの嫌がらせでここまでするとは到底思えない
赤龍本人が出てきてないのもきになるし、なにしろお父さんの姿を変えたのが気になる」
「……どちらにしろ、今わらわたちが出来るのは八岐大蛇を倒すことだけじゃ」
険しい顔つきでそう言った。


