「一一でぇー?ぼくに何聞いて欲しいの?」
乳白色の露天風呂に浸かりながら、リラックスしまくった様子で訪ねてくる。
だいぶ距離をとった隣にいる私は、居心地が悪くて仕方ない。
「だいたいわかってるでしょ…」
「あのメイドの子のこと?」
「……」
彼女は覚(サトリ)という能力をもつ。
その青いツノで神様だろうが人間だろうが、考えてることを読んでしまうのだ。
いわば彼女の前では全てが筒抜け。
何を隠しても無駄。
私はその性質を利用して、彼女に話を聞いてもらいたかったのだ。
アカネさまやミサキくんに、この感情をなんて言葉にすればいいのかわからない
でも彼女なら感覚でそれを感じ取ってくれる。
「柚邑って言うんだけどね
私アイツ嫌いなの」
だから、どんなことだって話せる。
今の私はとにかくこのよくわからない気持ちをわかって欲しかった。
答えを、欲してた。
「…ふぉー、それはそれは」
「だって人間だし、お馬鹿だし…」
「まあ見るからに頭良さそうには見えないよなぁー」
「見てるとイライラすんの。
アカネさまに気に入られてるからって調子に乗ってさ」
「うわぁ、なんてゆー主従愛…ぜってー真似できないなこりゃー」
引くわー、と眉を歪ませた。
「あとね、なんかつい目に付くっていうか」
「……目に付くっていうかー、追いかけるって言うんじゃー」
「触られると怒りで赤くなったりとか」
「……素直に恥ずかしいって認めなよー」
「百瀬ちゃん第一なとこ見てると、なんか…嫌だったりとか…」
「……」
あと、あと、あと。
ほかにもいっぱいあった。
こんな私を心配してくれたり、私を私より理解してくれたり。
待ってる間が長かったり、来なかったら不安だったり。
笑うとなんだかくすぐったくなったり、あと、あと…
「…覚で読み取った限り、私の感情は何?」
「恋じゃないのー?」
「……」
さらっと言い放った彼女に、ため息をついた。
なんとなく、予感はしてた。
話に聞いてる症状とマッチしてたし、あかねさまもそんなこようなことを言ってたし。


