「れ、驪さ……あの、俺…なにもできなくて…」

「あなたが気に病むことないんですよ」

「でも…!」

「大丈夫、彼女は強い」





泣きそうになる俺の頭を優しく撫でてくれる。


なんで知ってるんだ、とかそんなのより、頭を撫でてくれるという行為がどうしようもなく嬉しかった。





『弥生ちゃんの邪眼を君に移そう。

それで、君が当主になればいい』







一一信じられない決断だった。


彼女は心底邪眼を嫌っていて、嫌悪していた。


守白家そのものを憎んでいた。



そんな邪眼と家を一生背負えと、彼はそう言ったのだ。



これには鸞さんも怒った。



お前は彼女の気持ちを考えないのか、と。


『何を言っているんです、我が主。
妹を当主にしたくない。自分はどうなってもいいから。そう言ったのは彼女ですよ?

最善じゃないですか』



確かにそうだった。

だけど、それは全て今日子ちゃんが邪眼を嫌っているから。

嫌だから妹にその道を歩ませたくないし、継がせたくないのだ。