「……え?」
思わず聞き返した俺に、複雑な表情で返してきた。
「…なんとも言いにくいんですが…
神格の高いあなたの子供は、どうしても神格が高くなってしまう。
でもね、母親の体内でできた子供の肉体はやっぱり人間なんです。
人間に不釣り合いなほどの霊力がドカンとその子に課せられる一一良くも悪くも。
…こんな話があります。
ギリシャ神話のゼウスは人間に化けて、人間のセメレという女と関係を持ち、子供を作りました
しかしゼウスが本当にゼウスなのか疑ったセメレは、ゼウスに真の姿を見せて欲しいとせがみ、結果一一ゼウスのあまりの神格の高さの熱さに耐えきれずに死んでしまった」
神格(信仰)とは、人間には耐えられないものなのだ。
人間には背負えないほどの重いものを、産まれながらにして背負うなんて。
ただの人間にできる所業ではない。
たしかに神格の高い人間はいるけれど、それも日々の努力から人ならざる力を身につけ神格を高めただけ。
霊力も微量だし、神格の質もたいしたことない。
なにしろ、人間の身の丈にあっている量なのだ。
「しかし、無事に生まれれば、神々と人間の橋渡しとして素晴らしい子が生まれます。
ちょうど、先ほどの子供のディオニソスのように。
この神は神々と人間の関係を曖昧にしたりして、いわば橋渡し的な神として信仰されています。
神と人間に同じ宗教を布教し、関係性を曖昧にしたのです」
詳しくはエウリピデスの『バッコスの女達』をどうぞ、などと言われた。難しいことはよくわかんないからやめてほしいんだけど。


