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倒れそうなほど本が並んだお父さんの部屋。
お父さんが管理している異界についてや、その他重鎮の神々から寄せられる最新情報などをまとめたものだ。
この、匂い。
たくさんの紙に詰まった歴史や努力が濃縮されたような匂いが、俺は結構好きだった。
この匂いを忘れてたなんて、多分どうかしていたんだろう。
なんて、現実逃避のせいかそんなことが浮かんでは消えていた。
「いえ、何しろ私も初めての事例ですからねぇ…黒庵」
困ったように本をめくるお父さんに、項垂れる俺。
顎に手を添え、うーんとうねる。
「鳳凰クラスの神獣が、不貞とは…」
「……」
「なんのために番になって生まれてきてるのかわかってるんでしょうかねぇー」
「……」
「あーあー、やっぱり。
狐とかの神獣が人間と交わる例はありますが、こんな高位の神獣はないですねぇ」
「……」
「ただでさえお父さん最近最高神としての威厳的な何かが失われ始めてるのに、息子がこうなってしまうとは…世間様に顔向けできませんねぇ」
「……」
「あーあ、どうしましょうねぇ」
「ああああ!もう!!怒るならはっきり怒れよぉおおお!!」
こう、嫌味を言われて怒られるのはなんとも言えない罪悪感が来るんだよ。
それも、いつもは優しいお父さんにやられれば余計に。
「ったく、おばかな息子を持つと大変ですよ」
「……ごめん」
あああ、もう。
迷惑かけたくなかったのに。


