「あのね、今日子さん。
あなたを拉致したのは、知るためなんです」
「…しる、ため?」
「俺たちは何も知らない。
だから、教えて欲しいんです一一邪眼について」
また、不思議そうに見られる。
彼女はいつもこんな風に見つめてくるな、なんて思った。
「……そっか、だから…わざわざ薬解いたんだ」
「うん。きみは常時変な薬を服用させられてたみたいだからね。
人格や意思をとろけさせる麻薬みたいなものを使ってる人間とまともな会話はできないでしょう?」
「おかしいと思ったんですよ、邪眼目当てなら、薬を飲ませて強くさせるのに…って言っても何も知らない人に言ってもわかんないかぁ…」
ため息をついた彼女の後ろにまた回って、拘束を解く。
自由になった腕を見て、息を飲んだ。
真っ白の形の良い腕に、青いアザや打撲の跡だらけ。
「……」
この怪我は、いったい…。
「…教えて何になるかだけ聞いていいですか?」
腕を上げのばしして、馴染ませながら。
「邪眼を一般人に教えたら、弥生に危害が行ったりするような事態になりかねないですもん。
何に情報を使うかだけ教えてください」
あくまでも、妹のため。
異常なまでの固執に、さすがに苑雛くんも苦笑した。
疑われたのが不服だったのか、若干頬を膨れさせながら鸞さんが答えた。
「大丈夫じゃ、安心して良い。
わらわたちは本当に純粋に知りたいだけなのじゃ。
そして、あわよくば救いたいと思っている」
青い綺麗な目が見開かれる。
「理不尽に存在している邪眼にきちんと人権を。
わらわたちの目的は、それだけじゃ」
「……」
ぼんやりと鸞さんを見つめ、にっこりと笑った。
年相応の、愛らしい笑み。
邪眼という恐ろしいものとは対極のような。
「ありがとうございます。
言葉だけでも、とても救われます」


