「え、あの、苑雛くん?さっきから言ってる用って何?
俺学校とかあるから男に戻りたいんだけど…」
今は昼休み。
のうのうと女の子やってる場合じゃないのである。
これから午後の授業あるし。
「んー、だぁめ。
おねーさんにはどうしてもやってもらわなきゃならないことがあるの。女の子で、それも今すぐに」
「…?」
いつにも増して強引な苑雛くん。
「でも、その…エンスウくん?だっけか。
こいつは授業があってだな…」
「うん、知ってるよ。
大丈夫、抜けた分はちゃんと僕がフォローする」
「ちょ!?エンスウくん!!高校二年生のって、足し算とかじゃないんだよ?フォローするとかそういう問題じゃ…」
当然、苑雛くんをただのちっちゃな鳳凰としか思ってない彼らは慌てた。
小さな子が背伸びをしていて、なおかつ高校生にとってどれほど授業が大切かをわかってないのだ、と。
むうっ、と頬を膨らませた苑雛くんは、機嫌が悪そうに言った。
「僕は鳳凰の中でも頭脳を担当するんだ。
いわば勉強の神様だ。
もちろん学業の大切さはわかってるよ、だけどね?逆に言えばその僕がこちらを優先して欲しいと言っているんだ」
早口にまくしたて、脳が言葉に追いついてない紅太たちを睨みつける。
可愛らしい子供の笑みを全部消して。
「こんなことしてる場合じゃないんだよ一一事態は一刻を争う。
“彼女の心を解いたただの人間の君にしかできないんだ”」
意味がわからなくて、首を傾げようとしたとき。
パシャンと、水がまかれた。
「わっ」
足に水しぶきがかかって悲鳴をあげてしまう。
苑雛くんが、どこからか取り出した霊水の入ったタッパーをぶちまけたらしい。
「な、なにして」
「あー、そうだ。このままじゃ誘拐だ」
そう言っていきなり俺の胸元を弄りはじめた。
「わわっ!ちょ、やめっ」
無造作にブレザーに小さな手を突っ込み、ごそごそと動かしていく。
“なんかエロいな…”
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょうアカネ様…」
呆れた二人の声の後、「あった!!」と、嬉しそうな声が上がる。
取り出したのは、あの金色の羽だった。


