「アカネって人のところに行くの?」
「…ああ」
「あのメイド服の子?」
「ちげぇよ、あれは柚邑って言って…」
言っても無意味だと気付いた。
由美は、やはりただ俺を縛り付けておきたいだけなのだ。
メイド服の子が誰だろうとどうでもいい。
ただ、俺を少しでも長く縛り付けておきたい。
それだけのくだらない会話なのだ。
「……じゃあ行くわ」
無意味だと気付いたら、なんだか早々に立ち去りたくなってしまった。
だってこいつに未練はない。
今はこいつよりも、アカネが先決だ。
同棲の間にできた荷物をまとめたボストンバッグを持ち上げ、ゆらりと立ち上がった。
「あ、もう行くの?」
「…ああ」
「もうちょっとゆっくりしてけばいいのに。またいつでも来てね?」
「…もう来ねえよ」
「あなたの子供にも会いたくないの?」
思わず、振り返ってしまった。
顔を上げた化粧っ気のない由美の顔は、笑ってるようにもみえた。


