由美の時では考えられないほどの充実感に、胸が踊った。
キリスト教だかなんだかでは、男女は半身と言われている。
常に自分の半身を求めてやまず、一つになろうと欲する。
事実、そのとおりなのだ。
アカネという半身を欲していて、でもそれが誰なのかわからなくて。
中身のない偽りの愛でごまかして、空っぽになっていった。
ようやく出会えた半身は、なぜか体がなくって。
触れることもかなわないけど、それでもこの笑顔が見れるなら別にいい。
「本当に普通のガキだな」
あんまりアカネが柚邑を見つめるのでそう言えば、いたずらっぽく笑んだ。
「そうでもないよ?」
「え?」
とっておきを話すみたいに、誇らしげに口を開いた。
「なんてったってあのスズが懐いてるんだもの」
「マジで?あのスズが?人間に?」
「うんうん!相変わらずツンデレだけど、気がつくと見つめちゃったりしてさ」
「え…まさか」
「恋だったりしてねー!」
「うっわ、そんな面白いことになってたのかよ!
こりゃあ、はやくスズ見つけ出して見なきゃな。
その幻の光景」
「うん!」
どこか幼く頷いた最愛の人。
朱い髪が揺れて、白い肌が笑顔に染まる。
そう、彼女を守るためならなんだってしようって、思ってるんだ。
否、思ってるからこそ一一したんだ。
「一一そう、そうなの。
魔法は溶けちゃったのね」
儚く笑んだ女に、うつつに戻された。
真っ黒の髪に、質素な衣服。
派手な格好を嫌う万年学級委員みたいな由美は、恐れていた激昂などをしたりはしなかった。
ただ、淡々と。
儚く笑んで、受け入れた。


