「いただきまぁす、…んん〜!美味しい!」
黒庵さんの料理を前にすれば、みんな感嘆の声をあげるみたいだ。
「黒庵さまは相変わらずお料理が上手ですね」
「記憶は無くしてても料理の腕だけは変わってなくてな。自分でも驚いた」
思い出も記憶も何もないのに、ただ料理の腕だけがある。
どんな感じなんだろう。
俺は記憶喪失になったことないからわからないけど、きっと怖いんだろうな。
目の前が真っ暗になっちゃうような感じなんじゃないかと、推測できる。
「…おいたわしい…」
スプーンを加えたまぬけな格好のまま、スズは呟いた。
「体に異常とかはないですか?あったら苑雛さまに治してもらいましょう」
「スズ…治してもらってから苑雛くんを便利屋扱いしてない?」
「まっさかぁー!偉大なる鳳凰を便利屋扱いなんて、するわけないでしょ?ただ苑雛さまのお力を利用しようと」
いや、便利屋扱いしてるよね?バリバリ利用しようとしてるよね?
“アイツ頭いいくせに人間関係にはバカだからなぁー。怪我とかしたら治してもらえよ”
「じゃあ大っきくしてもらいます…!」
“…それは無理かなぁ〜。髪伸ばすとかならできると思うけど”
どんだけ大きくなりたいの、スズ。
「ゆーちゃんですらあんなに大っきいのにぃ…神格の高い私の方が小さいとかどういうこと⁉︎」
「…スズちゃーん、大人しくカレー食べてましょうねー」
「くぅっ…見てなさい!今にボンッキュッボンッになって見せるんだから!」
そんなに熱く宣言されても…
いうこと言って満足したのか、スズははぐはぐとカレーをバカ食いし始めた。
苑雛くん、お願いです。
スズの願いを叶えてやってください、なんか可哀想です。


