◇◇◇
ありえないほど本格的なカレーライスが目の前に並んだ。
「……」
インド人もびっくり。香辛料からこだわってるような良い香りがする。
お腹は空いてなくても、うまいぐあいに香辛料の香りが食欲をくすぐってくれた。
「…上手なんですね、料理…」
鸞さんのを借りた、紺に白のフリルのエプロンという、細マッチョでいかつい外見にそぐわない格好の黒庵さん。
いわずもがな、目の前の有名インド人が作りましたなカレーライスは彼の作品だ。
「…料理は嫌いじゃねぇんだ。
細かい作業とか案外たのしーしな」
うわあ、意外。
しゃらくせぇー!とか言いそうなのに、細かい作業好きとか…。
ああ、でも確かラーメン屋を腕と顔で復興させた逸材なんだったけか。
鶏ガラを一切使わずに。
すごいな、できる男って感じ。
“うわぁー!いいなあいいなあ!
私も黒庵の手料理食いたーい!”
「体もないのにどうやって食べんのさ」
中のアカネがぎゃあぎゃあ騒いでうるさい中、スプーンを手にとって。
「いただきます」
「はい、めしあがれー」
昨日とは比べ物にならないほど豪華な夕飯に手をつけた。
あれから、驪さんの異界に帰り、とりあえず俺やスズの霊力を補充した。
鳳凰の身体なら弄くる事が出来る苑雛くんが七歩蛇の毒を解毒し、スズは一命をとりとめた。
『黒庵さまがまさか助けに来てくれるとは思いませんでした…』
そう嬉しそうに言うスズに、アカネが
『私も記憶諦めてたかんねー。女作ってたし』
といじめたおかげで『ひどいよアカネちゃぁあああんっ』と一波乱あったのは置いておいて。
とにかく、俺は今人間に戻るための夕飯を取っているわけだ。
それもキッチンがない驪さん宅ではなく、鸞さんのマンションで。
“くっそぉー!私はこんなに体を無くして悔しかったことはない!”
「…まあでも、黒庵さんが戻ってきてくれたんだもん。きっとすぐに竹の実を手に入れて体を元通りにできるよ」
心底悔しそうに地団駄を踏むアカネを励ましたくてそう言えば、複雑そうな顔をしたのは黒庵さん。
「…どうしたんですか?」
「…あ、いや。なんでもねぇよ。
そうだなぁ、さっさとアカネの体を復活させてえっちなことしねぇとな」
“っ〜……この浮気男っ”
「照れ隠しにそれ使わないでアカネちゃんっ⁉︎」
アカネが真っ赤になってるのが気配でわかる。
ま…また始まった、痴話喧嘩だ。


