そのとたん、くらりと彼女は倒れる。
それに体を預けたまま。
それは最初は形がわからなかったけど、だんだん輪郭がはっきりしてきた。
虎みたいに大きな狐、である。
ホワイトフォックスって奴なのか?
普通ならきゃーきゃー逃げるか、可愛いって騒ぐとこだけど、その狐の顔は優しかった。
なんだか母親みたいな、ポカポカした感じ。
威圧感や恐怖心や乱心が嘘のようになくなり、不思議だった。
「…白狐」
肩が治ったのか、むくりと起き上がりながらスズは確認する。
白狐?
「…救っていただき感謝する」
それは意外にも美声で、礼を述べられた。
あ、男だったんだ。
「乱心したこやつを主――元のもとに連れていく。
我らのせいで、迷惑をかけた」
「本当だっ…謀反など、どうかしてる!
アカネさまになにかあったら、どうなっていた!
全鳥類の長の分身の名に懸けて、私が全力で殺しにいくっ…!」
「承知している。
……我らの管理ミスだ。
…む、どうやら人間の中に鳳凰がいるようだな」
「え…ああ」
俺はつい返事を返してしまった。
「事態は読めた。詫びに我々はあなた方に協力をしよう」


