「おかげで、普通なら体験できないような出会いが出来ました!」
ほくほくとした笑みで言った。
いかつい顔には似合わないほど良い笑顔で。
「朱いのはもちろん、黒いのや黄色いの、青いの、スズちゃんにだって会えたしぃ…
普通なら生涯会うことがないような青龍さまにもお会いできましたし…」
スズのところだけ無駄にテンション高かったきがする。
「そりゃ、ムカつきますよ。こいつには。
わしがずぅっと恨んできた敵ですし。
だけど、さっき朱いのが必死に青いのを怒っているのを見て、思ったんです。
親の分までわしを想ってくれてる人がいるのに、わしは何を恨んでいたんだろうって」
親を殺した安倍晴明は憎い。
だけど、その分自分を想ってくれてる人に出会えたんだ。こいつは。
『だありん!あそこ!』
『あ?…あ』
『あの子!助けてあげて!』
山火事に飲まれそうな雛を見つけ、助けたことを思い出した。
まだ天狗にも成れなかったこいつをなぜかアカネが知っていたのには驚いたが、さすが貿易。
遠くの天狗一族に教育を依頼した。
『名は宮下ってゆーんだ。いいか?絶対にちゃんと育てろよ!見にくるからな、絶対育てろよ!』
泣きそうな顔をして雛を預けたアカネを無下にできなかったらしい。向こうは了承してくれた。
『アカネ、どうしたの?なんかいつにも増して熱い…』
『…あの子が孵った時に、私はたまたま見に行ったんだよ』
『え?』
『すっごい両親が喜んでいて、兄弟にそれぞれ名前をつけてて…
朱祢さまどうです、可愛いでしょうって。嬉しそうに言われたんだ。
あの両親の愛を失ったあの子は可哀想だ』
『アカネ…』
『いいか、だありん。お前もたまに見に行ってやってくれ。
愛してあげて、頼むから……』
ずいぶんと大きく育ってしまった烏天狗。
おっさん、という呼称が似合うようになってしまった。
「もうそれでいいやって思って」
なんだよ、これ。
スッゲェ嬉しいんだけど。


