ぶっきらぼうに呟いたじーさまに、キョトンとする麒麟。
「どなただったかしら」
「さあ…」
「気品のある方ね」
無垢に微笑む泰夫婦。
麒麟の寿命は、大体千年くらい。
寿命のある生き物なのだ。
だから、何万年も前に起きた世代交代など知る由もなく一一
「…青龍というものだ」
創龍を名乗ることを辞めた神々の最高神と、誰が思うだろうか。
「…応。ごみ捨て場にこいつを連れて行こう」
「あいよォ」
気前よく返事をした応龍さんは、また空を切るような仕草をし、真っ暗な闇の空間を出現させた。
空間を自由に操ることができる神格の高さを見せ付けやがって。
「じゃあねぇ黒庵ちゃん。貰っていくわよォ」
「ちっ…ごみ虫野郎は俺様が始末してやりたかったのに」
獲物を横取りされた部分だ、畜生。
よいしょ、とガタイのいい肩にぐったりとした安倍晴明を担ぎ、空間を跨いで入った。
続いてじーちゃんが入って、無表情でこちらを振り向いた。
「宮下」
「っ⁉︎」
宮下が驚いた顔で顔を上げた。
元最高神である青龍自ら声をかけられたとなりゃー、緊張するわな。
「すまないと思ってる」
「え…」
「私が彼に過信し過ぎたせいで、お前の全てを奪う結果となってしまった」
「っ、」
堂々とした態度に責められないのか、息を詰まらせた。
「…青龍さま」
「…なんだ」
「わしは、そいつのせいで全部を失ったんです。
わしを育てて導いてくれる親や、安心して過ごせる環境、故郷……幼かったわしの全部を」
居心地が悪そうに無表情を歪めたじーちゃんに、宮下は慌てて声音を変えた。
「で、でも!青龍さま!」


