妄想世界に屁理屈を。



「…お前は、あの天狗の仲間か…」


神様と成っている彼は、霊力が無ければ存在できず――自然にとろけるらしい。


霊力を継続的に送って、この世に“生かさせてくれた”赤龍の供給をストップさせたのだ。


安倍晴明は、この世にこの形で留まれない。

ゆっくりと消費されていく辛さは誰よりもわかる。


そんな彼が瀕死で紡いだ言葉。



「ふむ…御上に知られなくて良かった」



「――」


息を飲んだ宮下さん。


「存在を隠してくれて助かった。
礼を言おう、天狗」


唖然。


天狗退治を失敗したことを知られなくって良かった、なんて。

考えもしなかった思考だった。


「父上ェ、人を見る目が落ちたわねェ
こぉんな屑が珠を取れると思ったのォ?」

「………黙れ」


呑気に会話をする声と、風を切る声。



気がつくと側にいた黒庵さんは安倍晴明の元へいき、なぜか腹を蹴っていた。


ドカッと、容赦なく。何度も、何度も。


“だありんっ!?”


アカネすら気づかなかったらしい。

速かったなあ…キレたのかなあ…


「っぐ、ぅあっ…」

「あれ?いてぇの?腐ってんのに?死んでんのに?」

「や、ばんっ…だな…」

「当然。つーか、当たり前。


俺様――黒龍守りすぎて鍛えられちゃってるしね」