妄想世界に屁理屈を。



“なんかはずかしーな。
心も体もつながってるなんて!”

きゃーっとなぜか興奮したアカネに反応したのは

「おまっ…柚邑!勝負だ!殺ってやる!」

当然、黒庵さんだった。

「誤解だから!ちょ、木の枝振り回さないの!」


敵に回したくない人を敵に回してしまった。

そこらで拾った木の枝でビュンビュン攻撃してくるんだけど、ねぇ!


「はいはい。また騒がしいなあ…着いたから静かにしてね?」


「…着いたの?」

どうみても同じ景色なんだけど、着いたのか?

木々が生い茂る薄暗い森。

何か建物があるわけでもなく、まったく変哲のない誘拐場所だ。


「黒庵、お願い」

「あー、そういう事ね」


ネックレスの前で空を掴むような仕草をすると、ぬるりと柄が出現した。

真っ黒の禍禍しいデザインに、白のムーンストーンみたいな宝石がきらめく。

月みたいな金色の細工が、銀の刃(ヤイバ)に似合っていた。


短剣。


それは、踊り子が使いそうなほど豪奢なものだった。



そんな短剣で空を切る。



風を切ったのに音がまったくしなくって、寒気がした。