妄想世界に屁理屈を。


「うっ…くっ、ん……ぅああっ!」


ずぬっと、針が抜ける。

同時に血が流れ、安倍晴明の衣服を紅く染めた。


疼くような痛みに身悶えしていた私だが、また霊力が流れてきて、私の傷口を埋めていく。


「アカネさまの霊力をそんなに減らしたいの!」


「否、これは違う」

「え…?」


がくんと、体の芯が抜けたみたいに動けなくなった。


ふっ、と髪の毛を舞わせながら床に倒れる。

冷たい感触に強張ったが、指先も自分の意思で動かせなくなった。



「なっ…」


「毒針だ。痺れる作用があり、二日は抜けぬ。
ああ、それは七歩蛇の毒。妖怪の、神の毒だからな。
多分な霊力が無ければ解けぬ」


強力な毒をもつ妖怪の名に、びびる。

「神であるお前は死にはしないだろう。
それに、痺れる程度に薄めてある」

「…っ…」


完全に、動けなくなった。


「くりかえす。お前になど興味はない。

お前のその先に用があるのだ」


珠を狙う人間ごときに丸め込まれたことに、屈辱を覚えた。

アカネさま、と叫びそうになり、堪える。


私がアカネさまを呼んだら――危険なのは鳳凰と驪さまだ。


一家来ごときが危険を招くわけにはいかないもの。



ならば、祈ることは一つ。



(どうか、アカネさま。

私を見捨てて、忘れて。
――助けに来ないでください…)