「柚邑殿、また…」
「だいじょ、ぶ。黒庵さ…」
ミサキくんが倒れかけた俺を支えてくれる。
呆然とした店内に、俺の荒い吐息が響いた。
「わ、かるっ…?俺、アカネと繋がって、だから、スズが危ないと、こーなってっ…はあ…」
「柚邑。いいから、早く帰ろう。早く帰って霊水を…」
鸞さんが止めてくれるのはわかるけど、なぜか無性に黒庵さんにスズを助けてもらいたいんだ。
だって、スズはアカネと黒庵さんが大好きなんだから。
二人が迎えにいった方が、きっと喜ぶ…
「いま言わなきゃっ…スズが危ないって、いま…」
“柚邑、私が変わる、どけ”
「いいよアカネ…俺が伝える。アカネが辛くなるからっ…」
“…こんにゃろ、気づいてたのかよ。私がこいつ避けてんの”
誰でもわかる。
アカネは記憶をなくした黒庵さんを恐れてる。
拒絶されたのが怖くて、関わることを避けていた。
証拠に、彼女は黒庵さんの前で一回も俺に話しかけなかった。
“…ありがと。私も黒庵にスズを救ってもらいたいよ”
「あ、かね…」
ああもう、体が重い。


