妄想世界に屁理屈を。


『私、嫌われたくないよっ…アカネさまに、嫌われたくない…』


スズはあのときのように、気丈に振る舞ってるんだろうか。

痛い目に、怖い目にあってるというのに。


アカネを想う、ひたむきなあの目が恐怖に染まってるなんて、耐えられない。



「あ、柚邑おそーい」

「帰ってきた……て、え?柚邑?」



二人が何かを言ってるけど、頭の中はスズでいっぱい。


早く、助けたかった。


「…黒庵さん」

「……んだよ、変な匂いがする」

「今、変なのがいるみたいなんで、当然ですよ」

「…変なの?」

訝しげに俺を見てきた。

冷たい瞳に怯みそうになってくる。

ごくんと、飲み込んで。



「今その変なのに、スズがやられてます」



「…す、ず?」


目が開かれていく。

そのとき、また霊力が絞られた。

がくんと体の重みが増す。


衝撃で片膝をついた。


「スズが、つれさらわれて、ひ、ひどいめに、あって」


「柚邑!」

「どうした、柚邑!」


かけよってきた二人を制止する。

ありがとう、けど。


けど――今はスズを手っ取り早く返すために、この人を目覚めさせたいんだ。