「こ、黒庵さんっ」
「…あ?」
女の子にうっとりと見つめられていた彼がふらりと振り返る。
女の子たちに睨まれ怯みそうになるが、ちょっと聞いてみた。
「ここ、鶏ガラスープって使ってるんですか?」
「…ここは一切使ってねぇ。前は使ってたんだが、俺がやめさせた」
きゃーっ、と女の子たちの黄色い悲鳴。
え?今のどこが悲鳴なの?
「な、なんでやめさせたんですか?」
「……嫌ぇなんだよ、鶏ガラが」
吐き捨てるように言った黒庵さん。
やはり彼は、本能的に鳥を食すことを避けている。
理屈ではなく、感覚や本能で。
「珍しいな、お前の親戚の友達。鶏ガラが嫌いなラーメン屋って…」
「まあいいんじゃん?魚介風味の塩ってゆーのも不味くないし…うむ、あっさりしててうまし」
「あ!紅太勝手にスープ…お前のも寄越せ」
「間に俺を挟んで争うなー…」
はしっこ同士が争い始めたので、真ん中の立場がなくなってしまった。
ズルズルと麺をすすってみると、見事にトンコツだけのスープの香りが口内で広がった。


