じゃり。
健康に悪そうな食感が、口内で広がる。
ついで、苦味が。
「……」
猛烈に箸をおきたくなった。
レモンのおかげで遠くに酸味があるが、どう味わっても食欲を促すものじゃない。
あれだ、レモンぶっかけた土。
「見た目だけでなく味も土を表現してるとは…」
「うわあ…」
“ゆーちゃん、無理すんなよ?怒っていいからな、そこのピンクオーラ野郎”
二人が一斉に俺を同情の眼差しで見てくれた。
相変わらずイチャイチャしてる鸞さんたちに、げんなり。
この土、活力を無くす力もあるみたいだ。
さすが神様の料理。
どうしよ、さすがに食べれる気がしない。
怒っちゃおうかな、と迷っていた時だった。
コンコン、と窓ガラスを叩く音がしたのは。
「なんだ…?」
なにか飛んできて当たったのだろうか。
む、と顔色をピンクから通常に戻した鸞さんは、大事そうに苑雛くんを下ろして(抱き上げてた)ベランダへ向かう。
シャッとダークブラウンのカーテン(黄色を抑えた結果茶色になった)を開けた。
「なんの用じゃ」
鸞さんが不機嫌そうに話しかけた、窓ガラスの向こう側。
そこには、漆黒の烏が一羽鎮座していた。


