妄想世界に屁理屈を。



「次。彼が死んだのは知ってる?」


「はい、存じてますよ?」


「違う、スズと出会う前に死んだっていう事実を知ってる?」



――し、死んだ?



スズも知らなかったらしい事実に、目を見開く。


「安倍晴明は黄泉がえりをしてるんだ。史実だと一回、されど、何回も彼は死んでる。

それも死体から」


「――な、」


スズがあんぐりと口を開けた。


「わ、私は…禁忌を犯した罪人に、仕えて、」


がくがくと震えるスズ。

それを見て、舌打ちを打ってからアカネが話し出した。


“黄泉がえりは禁忌だ。やりゃあ世界の情勢が崩れる。やっちゃならねーことを、否、やれないことを人間がやったのか?”


「うん。そうなる。ある人間が助けたみたいだね」


確かに、一人で黄泉がえりはできない。
誰かの助けがなきゃやれない大事だ。


“…どうやって?何かの神の力でか?”


加護、か。


「……人間。中国人だよ。安倍晴明の恩師だ」


“はあっ?人間だろぉ?”