妄想世界に屁理屈を。


「こ…こうですか?えいっ」


ぽかっと、全く痛くない拳骨をミサキくんの腕に浴びせる。

ちなみにミサキくんは運転中、よいこは真似しないように。


“うし、さすがスズ、わかってんな”

「アカネさま…おほめいただき光栄にございますぅう…」


恍惚とした表情で俺を見る。


その傍らで、ミサキくんが殴られた(叩かれた?)腕を擦っていた。
痛くないはずだ、と思ったのも一瞬。彼は、スズを気遣って、痛いふりをしているのだ。

そういう小さいところがかっこいい。


“通訳頼むぞ。まず、その糸は黒庵の武の能力のネックレスに繋がってる。言わば、おんなじものだ”

「その糸はネックレスとおんなじ。黒庵さまの能力の武の一部を神格化したもの…ですもんね、アカネさま」

「はい、存じてますよお嬢様」

“本当に?”

「本当に?だそうです」

同時通訳が車内にて行われる。

正直いって聞きづらいことこのうえない。



“――繋がってるってゆーのはな、弱いも強いも…つまりは生きるも死ぬも共にってことだぞ?”