“スズ、殴れ、殴っとけ”
そんな声が脳裏に響く。
「はあ!?」
「あ、アカネさま!?」
アカネさま大好きなスズも、さすがにすっとんきょうな声を出した。
何を言ってるんだこいつは。
「…アカネ、なんでも殴ったり暴力に頼る癖は直したほうがいいと思う」
初対面でいきなり殴られ、頭グリグリされたり土下座させられたり正座させられたりした俺からすると、彼女の短所はちょっと良くないと思うぞ。
被害者は語る、だ。
“んだとぉ!!柚邑…じゃなかった、ゆーちゃんの癖に生意気な!胸揉むぞごら!脱がすぞ我ぇ!”
「やめろぉ!体乗っ取ろうとするなあ!てめっ…体乗っ取って脱ぐつもりだろ、恥ずかしいのは俺だからぁああ」
意識をぐいぐいと下がらせようとする。このやろう、やめろ!
「女声で言っても、説得力ゼロだよゆーちゃん…」
スズが呆れたように此方をみてから(お前の主のせいだぞ)、不思議そうに見ているミサキくんに意識を向ける。
ミサキくんはアカネと繋がってないから声が聞こえない。
「ミサキくんを殴れって仰ったの」
「お嬢様が、でございますか?」
“おぅ、ミサキくんの馬鹿にその糸について教えてやろーと思ってな。だからスズ、殴れ”
「理不尽、アカネ、理不尽」
大事な事だから二回いってみた。


