俺ら?

「やはり、繋がりが強い方をご覧になったからからでしょう。

吾じゃ、黒庵さまの記憶を引き出す力は弱いので」


「そんなことないよっ…!」


切なげに瞳を揺らした彼を、幼女が励ます。

「黒庵さまは、ミサキくんのこと大好きだよっ!?
じゃなきゃ、糸あげないもん」

どうやら感情的になると幼くなるらしいスズは、首にかけられた黒い糸を指差した。

ミサキくんとお揃いの、光沢を帯びた糸。

「糸は、繋がってる証なんだよ」

弱い家来の私たちと、消えた主人が――繋がってる。

そう言うスズに、冷たい瞳に暖かく光を宿して、ミサキくんは言った。


「吾も、朱雀の…スズのように幼く生きたかったです」


運転席から手が延びて、スズの頭を撫でる。

大きい手がスズの頭を包んだ。



「首は、束縛の意味でもあるのですよ、朱雀殿」



一生、鳳凰に使える身の彼等。

ああそうだ、神ではないミサキくんは、特に扱いがひどいんだった。

鳳凰のやつらがどうしようとも、ミサキくんの立場は代わらない。


呪われた従者の名を背負い続けねばならないのだ。


そんな立場の彼は、卑屈になるのかもしれない



“自分はただの家来だ”と。

決して、主の人生を揺るがすような輩ではない、と――