「ミサキくんっ!もうすぐ?」

「はい、もうすぐです」

「わあ、ミサキくん運転お上手ー!」


ミサキくんが好きで好きで仕方ないらしいスズは、きらっきらのお目目でミサキくんを見つめる。

見た目以上に幼いスズにとって、頼れるお兄さんみたいなものなんだろうな。

ミサキくん、男の俺が見ても包容力に溢れた人だし。


「……」


俺が授業を終えて屋上に行くと、もう苑雛くんはいなかった。

どうやらきちんと話して帰ってもらったらしく、あれから1時間くらいはしょんぼりしてたスズ。

ミサキくんとあってしばらくしたらこれである、タフだ。


「…もう来ないでって言われたのになあ…」


つい、呟いてしまった。

もう邪魔をするなと、あの女…山本由美に言われたのに。


二日連続とか、警察呼ばれないか不安なんだけど。


「だからです、柚邑殿」


運転しながらでも呟きは聞こえたらしい。

ミサキくんの低音の声が車内に広がった。


「黒庵さまは確実に怪しんでらっしゃる。自分の存在を、意味を、居場所を。

それは他ならない、あなた方を昨日見たからです」