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『おい!なあ、おいったら!』



チカチカと、暗いところから急に明るいところになった特有の現象が俺を襲う。


『てんめ…聞いてんのかゴラ』


ここは、ああ…海みたいだ。


あの、異界の狭間の。


明るい海は見たことがなかったから、一瞬どこかわからなかった。


朝方らしく、朝焼けが美しい。

初めて太陽の上がった異界の海を見た。


澄んだ濃い海の色に、てらりと反射される太陽。

波によって歪んだ色は目に焼き付く。

曇が赤く染まり、空色がかった空によく合う。


息をのむような美しい光景に、男女がいた。




『おーいー』


男にしては艶やかな黒髪。

同性の俺すら見とれる黒曜石の瞳に、ちょっと悪趣味…否、派手な着物。


黒庵さんだ。


彼が話しかけてるのは、朱い髪の少女、アカネ。

体育座りでうつむいていて、顔は見えない。

二人とも着物は日本のものじゃないらしく、帯が細い。

動きやすそうなそれのおかけで、小さく小さく体育祭座りができていた。