「あ、アカネさま…」
馬鹿馬鹿ばーか、と相変わらず幼い罵倒語で、スズを抱き締めながら泣く。
何がショックって、スズの家来姿勢だろう。
わかりあいたかったはずだ。
近づきたかったはずだ。
隣なのに、遠いのは身分があるから。
アカネもスズもわかってた。
だからあんなに隙間をとって、優しさを隠して。
「柚邑の体で勝手に泣いて…」
「うっさい…馬鹿!」
「はい」
馬鹿です、私は。
――アカネさまの優しさを、愚かさを、見てみぬふりしてたんですから。
「れ、驪さまはともかく、柚邑にま、負けるなんて…ひっく…く、屈辱です!アカネさまのことなら負けないって思ってたのに」
「馬鹿、気づかなかった、守れなかった私のほーこそ屈辱だ…何かあったなら言えよ、馬鹿野郎」
そう言うと、二人でわんわん泣き始めた。
まるで、姉妹のように。
否、久しぶりに“触れ合えた”親子のように。
わんわんわんわんと、泣きまくった。


