「鸞、そろそろ時間なんじゃないですかー?」
廊下の奥から驪さんが、パーカーと黒いズボンというラフな格好で現れる。
その手には苑雛くんのちっちゃい手が。
黄色い帽子を被った、ちょっとだけ女の子っぽい洋服だ。
「あ、すまないお父さん」
悶えを中止し、苑雛くんの手を今度は彼女が掴む。
「じゃあの。アカネにお父さんにスズ…に、柚邑。
わらわたちは保育園と会社に行ってくるでの」
「保育園…ああ、なるほど」
計算で言えば、人間の世界で暮らして4年と3年の彼等。
もう独自の『人間としての居場所』があるのだ。
「いってらー」
「いってらっしゃいませ。鸞さま、苑雛さま」
とてとてと池に向かっていく。
俺同様、ぱしゃんと仲良くお手手をつないで飛び込んだ。
「…どこに通じるの?」
驪さんに聞けば、
「鸞たちの家のお風呂場だそうです」
「それ共通なの!?え、てか服…」
「濡れませんよー!だってお風呂に“入る”訳じゃないんですから。お風呂から“出てくる”だけなんですから」
俺もそうしたいと思ったのは、言うまでもあるまい。


