由美の口を塞ぐと、幸せそうに目を閉じる。


互いの唾液を飲むように深く深くキスをして。

そうして、愛に溺れる。

「んっ…」と漏らす吐息すらいとおしい。




なのに。



この、不眠症はなんなんだろう。




満たされているはずなのに。


なぜこうも、渇望するのだろう。




また今夜も彼女一人が眠りにつく。


不思議なことに寝なくても生きていけることに気づいたのは半年前。

それ以来、こういう夜は起きてしまうことにした。


から、とベランダの窓を開けると、やっぱりと言いたくなる頻度でくる客がいた。



「おい、イト」



そう勝手につけた名を呼んでも反応しない。


――カラスである。


カラスにしてはやけに小さいから、まだ子供だろうか。

異形種らしく、三本の足がある。

首に絡まっている糸から、イトと名付けた。

真っ黒な七色に輝く羽に、合わせたような黒い糸。

たぶん何かの事故でついたのだろうが、束縛感を感じた。


餌もやってないのになついていて、毎晩…というか、視線を感じればいる。