『仕事だぞー?ほら、今度は悪女の狐だってさ』
『んでそんなに不機嫌なんだよ、まさか女だからって俺様がふらつくとか考えてんじゃ…んな顔すんな。俺はいつでもお前を』
『バッカかあんたは。スズと連絡が取れないから、不安で――』
誰、だっけ。
狐の女って、スズって、お前って。
誰だっけ。
思い出せそうで出せない気持ちの悪さ。
「だあくん?」
由美が不安げに見つめてきた。
「あ…ああ、なんでもねぇよ。んな顔すんな」
昔の俺と同じ台詞をつい言ってしまった。
蕩けるように笑う由美に、少しだけ驚く。
――違う。
こんな可愛い反応しない。
甘い言葉を『バッカかあんたは』で流したんだ。
いつまでも思い通りに行かなくて、それでいて――
「ね、やっぱりだあくん、キスぐらいしよっか。眠れないでしょ」
その言葉にうつつに戻される。
裸体に妖しく黒髪が流れていて、性欲を軽く刺激した。