想ってるから悲しいのだ。
自分を愛してるように見えても、奥底ではいつもシロを想ってる。
苦行の二文字だ。
いくら彼女に愛してる愛してると言っても、否、彼女に愛してると言われても。
全部が幻に見えてしまうのだ。
「…まあ、今じゃラブラブみたいでよかったです」
「も、勿論ですっ!だってアカネは、アカネは…」
アカネの傷つき具合でわからぬものなどいない。
そう思って叫ぶように驪さんに言い、泣きたくなった。
「…黒庵さんは、手放そうとしてるんですね、勿体無い」
「バカもーんっ!て感じですよねー」
せっかく彼女の心を手に入れたのに。
記憶なんかと一緒に手放していいわけない。
「あの子たちの恋はなかなかどうしてうまくいきません」
自嘲気味な驪さんの声が、耳にへばりついた。


