妄想世界に屁理屈を。



井戸の真っ白な水を、まるでその姿が写ってるようにせつなげに見つめる。


負けた、のだ。

彼が、シロが救われたのは、アカネであって。

親である驪さんではないのだ。


「驪さん…」


「あ、いや。すみません…変な雰囲気になっちゃいましたね」



えへへと照れたように、否、誤魔化すように笑う。

小さいから似合わなかった。



「私は、てっきりアカネと黒庵が番になると思ってました。

ですが、ある日見てしまいました。

二人がキスをしているところを。あの、異界の狭間の海で」



大好きな映画の一番好きなシーンを思い出したように、ふんわりと優しい笑み。

年を刻んだ笑い方に、親であることを認識させられた。


「シロは、確かに破壊神でした。ですが、そのぶん誰よりも優しい性格をしていた。

傷つけないようにと考えるあたり、本当に優しい子だったんです」


そんな所に魅せられたのかもしれない。



『変な子で、上から目線で、だけどどこか悲しい目をした、とても綺麗な子なの』

アカネの趣味がわかってきた。


タマといいシロといい。

アカネは優しいやつが好きなんだなあ。