「子供…とくに、アカネには言えない話をしたいんですよー」
ぐい、と当たり前のように引っ張ってくるコイツ。
「…」
まあいいや、と本棚と本棚の間の黒い扉の前にたつ。
和風な空間にそぐわない、どこか洋風かつ近代的なそれを驪さんは開けた。
「…っ」
そして息を飲む。
中には、井戸がひとつ。
本当にそれだけのためにある空間だった。
洞窟を無理矢理掘って作ったような石造りの昔ながらな井戸。
貞子さんとか出てきそうな不気味さがある。
「なに…これ…」
「中を覗いてみてください。」
言われて身を乗り出して見てみた。
中から黒髪の女が…とか想像したが、まったくそんなことはなく。
ただ、白い水が闇に照らされ溜まっていた。
「あ…これ」
「柚邑さんは昼間のんだでしょう?霊水ですよ」
昼間、水差しに入れてあった甘い飲物。
「確か、異界から通してるんだとか…」
「物覚えが良いですねっ!正解です。これは異界の湖に繋がるんですよ」


