◇◇◇
車は、隣の県まで行った。
どんどん街並みが変わっていくのは、ちょっとした恐怖だ。
“…そろそろだなぁ”
アカネが呟く。
「?なにが?もうつくの?」
“ん?や、ちげーよ”
前に座るスズが こちらを振り替える。
その瞬間だった。
「あ…れ?」
――息が詰まったのは。
気道が詰まったみたいに、息がうまく通じない。
指先が痺れたように動かない。
「…っ、」
どくん、心臓が耳先で嫌な音をたてた気がした。
くらりと意識が遠退きそうになり、思わず目を閉じると、瞼の裏が眩しく光った。
…は?
なんか眩しいものでもあったかな、と目を開ければ、目の前にお花畑が広がった。
…いや、マジで。
瞼の裏に広がっただけかと思ったそれは、まるで異世界みたいだ。
お花畑…、じゃない。池、否、湖。
森のなかにある湖だ。
名前は知らない。
だけど、なんだか懐かしくなるような――不思議な湖だ。
『何度言わせるのよ…ワタクシはあそこに忍び込める存在なの。なめないでくださる?』
声が、聞こえた。


