「異界といっても、あのごみ捨て場を除きます。吾は、あそこだけは行けるのです。行ったらもう戻れませんが」
「そんな…そんなの、さっさと消えろみたいじゃんっ」
「…事実、そうでございますから」
…ああ
どうしてそんな死んだ目をしてるんだ。
さっきスズと戯れた時は、無表情だけど暖かい目をしていたじゃないか。
特別ミサキくんは酷い。
やりきれない理不尽さを恨むことすら許されない、そんな身の上で。
彼は主だけを想うのだ。
そんな主に捨てられたら、彼は消えなくちゃならない。
どうにもならない世のつくりに、吐き気がした。
しかし、彼ら神を作るのは人間。
俺らが勝手に願い、乞うことで生まれてしまう神様。
自然のうちにこのようなシステムになってしまったのだ。
「…ごめん、ミサキくん」
「なんで謝るのですか、柚邑殿。吾はあなたを責めた覚えはございません。身の上も理解しています」
ふ、とまた暖かい目にもどり。
彼は大人独特の綺麗な笑いかたをして、こう言うのだ。
「吾は、主を見てきたのです。否、主だけを見てきたのです。主に捨てられた吾には、主なしの生き方がわかりません」
どこかで聞いた台詞に、また胸が締め付けられる。
――あ、スズだ。
同じ台詞を言ったのは、確か。


