妄想世界に屁理屈を。


「…な」


目を見開くミサキくん。

知らなかったのだ。


彼が、記憶喪失ということすら。


そしてそれが前世の記憶だけではなく、力の記憶すらもない…ということも。


力の記憶がなければ力は使えない。


“だありんは、たぶん今はただの人間だ”


つまりは、そうなる。


「ミサキくん、あのね?今は黒庵さまには記憶がないの」


「なっ!」


「…アカネさまを助けるときに霊力を消費しすぎて、欠けたの」


「だから、吾を…」


さあ、と顔を真っ青にした。


「ミサキくんを捨てたわけじゃないの。だから、ね?」



死なないで。


スズの絞るような声が、切なかった。