「…アカネさま?どうなされました?帰りましょう、お疲れでしょうに」

「体がねーのに眠れるかっつーの」

「あ、それもそうで…いや、アカネさま、ここにいつまでもいたら風邪を召されます!」

「体がねーのに風邪引くかっつーの」

「あ…」

「く、くく…」

「アカネさまが紛らわしいんですよ、もう!」


おかしくって笑うと、涙目になって怒りだす。

…見た目が幼いから、余計に小さく見えるんだけど。


「ふふ、ふふ…」

かと思ったら笑いだし始めたスズ。

「どうしたー?」

「…いえ」

目元の涙を脱ぐって。


「アカネさまとこうしてお話できるのが、とっても幸せだなあって思いました」


「ス、ズ…」

あぁ、ごめんなさい。

口許まででかかった言葉を急いで飲み込む。

私の見境ない行動で、きっとスズも傷ついた。

でもそんな謝罪の行動を彼女は望まない。


きっと、謝罪の言葉を出させた己の言動を恥じさせるだけだ。


主従関係なんて、こんなもん。


「なにいってんのー?それはあんたの好きな人にいうべき言葉だっちゅーの」

「なっ…アカネさま!私にそのような人は…」

だからこそ私は、その言葉を受け取らない振りをしなくちゃならない。

こころの奥に隠して、あとでひっそりと楽しむのだ。