「…あーあ。私のだありんは今いずこに…」
無意味に悲劇の少女を演じてみる。
から、と後ろの障子が開く音がしたので急いで振り返る。
「アカネさまっ」
「スズ」
驚いたような形相を浮かべる、ロリ着物少女。
「いつからそこに…いや、何をしてらっしゃるんです?アカネさま」
「…月見だよー?」
す、と空に光る月を見る。
美しい、けれど寒々しい、決して表舞台には出れないような、隠れた輝きを見せる月。
「タマみてーだなー」
「お月様がですか?」
そぉっと隣に来て、覗くように月を見やる。
その光に茶色の瞳が照らされた。
「…玉藻前ちゃんの方が美しいですよ」
ふふふ、と楽しそうに笑う。
きっとタマを目深に浮かべてるんだ。
いつからだろう、彼女が私の隣というポジションに慣れたのは。
主従関係なんて蹴飛ばす勢いで、私はスズを可愛がっている。
『居場所』をやったけど、なんかなあ…
私の居場所がスズの隣、みたいになってる気がする。