妄想世界に屁理屈を。



豪奢な着物は破れてボロボロになっていて。

胸元にはいくつもの血。


『それは…』


こんなになってまで、タマが叶えたいものとは。



『それは、妄想じゃない世界を作ること?』



あやふやな道を目指して、死にかけるなんて。

なんだかムカついた。

その夢のために生きている――否、夢に生かされている。


そう言っても過言ではないほどの想いを、バカにするわけじゃないけど。


もっと自分を大切にしてほしかった。

ただ、それだけだった。


『そうね、それもあるわ』


しかし、答えは思ったのと違った。




『でもね、わたくしは、またあなたとこうして会って、話をしたいのよ』




『た、たま…』


見なくちゃ。彼女を。

いつ会えるかわからないんだから、きちんとした視界で。


なのに、なんで涙なんか…


『ほうら、泣く。馬鹿ね、だから放っとけないのよ――』


その言葉を最後に、流れるように石に吸い込まれて行った。


輝く粒子となって、石に。


『まっ…!』


走って追いかけるも、手遅れだった。




タマの石が斬られたと聞いたのは、それからすぐのことだった。