妄想世界に屁理屈を。

◇◆◇



「玉藻前ちゃんはいい子なんだ。アカネさまが本気で惚れたんだ」



聞こえないわけがないじゃないか。


「っ、」


お父さんとの話が終わり、スズを探していた時だった。

隣なんだし、聞こえないわけがない。


「だから、頼むよ人間…ううん、柚邑」


あのスズが頼み込んでいるのは、まごうことなきただの人間。

人間に追われ、傷つき、翻弄され。

ズタボロにされた過去をもつあの子が、頼み込んでる。


それだけでもすごいのに、タマと私のためだと言う。


あの子がずっと私を崇めてくれてるのは知ってる。


こんな私を、親とか兄弟とか恩師とか、そういうのをひっくるめて愛してくれてるのは。



それに甘えるのか。この鳳凰たる私が――



「鳳凰ね…」

今の私に名乗る資格はあるのか。

体がないために、ただの高校生の柚邑を巻き込み、スズには忌み嫌う人間に頭を下がらせた。

体がないのも、見境なくタマを助けたから。



『無駄よ、もう』



そう言われたのに。