届けるって…
浮かんだのは宅配便だったけど、ちがうよな。そんなわけない。
きっと水のあるところに空を繋げて届けるんだろう。
「ねぼう…で思い出した、眠い」
「お前マイペースな生き物な」
ふああ、とあくびをするスズ。
愛らしい幼児に似つかわしい仕草だ。
いつのまにとろんとした目付きで、このまま寝てしまいそうな。
「…寝てくる」
「うん、おやすみ」
スズはスズの部屋があてがわれているらしい。
アカネが居場所といった通り、きちんとこの家に。
この家、どれだけ部屋があるんだろ。
今度調べてみようと心に留めた。
とててと襖まで歩いていき、かたんと手をかけ――そこで動作を止める。
「…玉藻前ちゃんは、いい子なんだ。アカネさまが本気で惚れた人情の持ち主だ」


